ラボ専用の契約書を作る(その2)
2020年06月10日付けブログ「ラボ専用の契約書を作る(その1)」でお話しした通り、伊澤先生(伊澤文平さん)が率いるIT専門のトップコート国際法律事務所に依頼して、ラボ専用の契約書を作る事にしました。最初に決めたのは契約書の類型で、準委任とし、特約として完成保証と瑕疵保証を付ける事にしました。一般的な契約書と比べて、特徴的な点を以下にご紹介します。
一点目は、変更管理です。ラボ型による開発においては、一旦合意した事項が事後的に変更される場合がある、と言う事が前提になっています。そこで、「変更協議の要請があったときは速やかに協議に応じなければならない」とか、「手続きを簡略化する為、個別契約を修正しなくても、プロジェクト管理ツールのチケットに記録したときに当該変更は有効となる」と言った事を定めています。
二点目は、完成保証です。準委任とは異なり、完成責任を負うようにしています。「予定納期を過ぎた場合はベンダの費用負担により本件成果物を完成させる」とか、「予定納期の翌日から納品の日までの日数に応じ、当該個別契約に定める業務委託料総額に対して年利5パーセントの割合で計算した額を違約金としてユーザに支払わなければならない」と言った事を定めています。
三点目は、瑕疵保証です。準委任とは異なり、瑕疵担保責任を負うようにしています。「瑕疵が発見された場合、ユーザは、ベンダに対して当該瑕疵の修正を請求することができ、ベンダは、当該瑕疵を無償で修正する」とか、「修正責任を負うのは、検査に合格した日から起算して12か月以内にユーザからベンダに対して通知された場合に限る」と言った事を定めています。
四点目は、連絡協議会です。仰々しい名前ですが、いわゆる定例会議の事です。前述の変更協議もこの会議で行います。「議事録を作成し、これをプロジェクト管理ツール経由でユーザに提出する。ユーザは、これを受領した日から3日以内にその点検を行い、異議がなければプロジェクト管理ツール上で承認を行う」と言った会議の細かい運営ルールまで定めています。
五点目は、個別契約の解約に関する事です。ラボ型開発の良さは試してみないとわかりにくいものです。気軽に試す事ができるよう、いつでも解約できるようにしました。「個別契約の有効期間中であっても、ベンダに対して書面をもって通知することにより、当該個別契約の解約の申入れをすることができる。この場合において、当該個別契約は、解約の申入れの日の属する月の翌月末日に終了する」と言った事を定めています。
2020年4月から、この専用契約書を使い始めました。日本で初めての珍しい契約書である為、お客様側の法務の方も戸惑うらしく、今までより契約書レビューのやりとりが増えました。このように、実践で使い込む事で、ブラッシュアップを進めて行こうと思います。
石躍